2011年04月05日

幼いお子さんの様子に応じた関わり

幼いお子さんの様子に応じた関わり
東京学芸大学教授 臨床心理士 小林正幸


この文書は、「東北関東大震災特設 先生のためのメール相談(http://for-supporters.net/)」の、
コラムの内容を文章化したものです。

被災地にいらっしゃる方々の助けになりますよう、印刷・配布してもかまいません。
また、上記のサイトより、今回の災害に関しての子どものケアについて、相談することができます。
ぜひご利用ください。

★はじめに
「サイコロジカル・ファーストエイド 付録」「サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版」
(Psychological First Aid ; PFA)
を参考に、一部を、支援者である学校の先生に分かりやすい表現にしております。
被災地では、この資料の全てをダウンロードして入手できないかもしれません。そこで、簡単に画面を眺めればすむようにしたものです。
以下に、この原版の資料入手先となるURLを明示します。そちらが入手できる方は、その資料の方が充実しております。それを参考になさってください。
http://www.j-hits.org/psychological/index.html

大人が幼いお子さんの様子に応じて、こんなふうに関われたらいいなぁと思うことを、お伝えしていきます。
くれぐれも言いますが、これから述べていくこと全てを、「お子さんにしなければならない」なんて思わないでください。
第一、頭ではこのようにしたいと思っていても、できないことはありますね。
それどころか、その逆のことをしてしまって、「しまった」と、頭を抱えることもあるのが普通です。
完全であろうなんて思わないでください。
「こっちの方が良いんだ」と分かっているだけで、もうそれで十分なのです。

★支援者がお子さんの支援のためにご家族にできること
支援者、学校の先生など、他人ができることと、ご家族でしかできないことがあります。
保護者に「○○をするように」と指導するのは、ご家族に行う支援にはなりません。

「このようなお子さんには、このように関わると良いかも・・・」と、関わりのモデルを目の前でしてみせるのです。
そして、お子さんを穏やかな笑顔に導いていくこと、これが子どもに関わる先生方に求められる専門性だと思います。
親子関係は何年もかけて作られてきたものです。
「こうしてください」と言われて、保護者が急に変われるものでありません。
ですので、ご自分がしてみせて、変化をさせて実績を目の当たりにさせてから、コツを伝えてください。

★1:睡眠の問題
【状態】
布団に入りたがらない。ひとりで寝るのを嫌がる。夜中に叫んで目を覚ます。
ぐずぐずいつまでも寝ない。ひとりでは寝たがらない。夜中にすぐ目を覚ます。大きな叫び声をあげて起きる。

【関わり】

▼一緒に寝るように勧めます。
一緒に寝るのは、小さい子と思っている年齢のお子さんであったら、恥ずかしく感じるかも知れません。
それを恥ずかしがって嫌がるようなときは、「寂しいから一緒に寝てくれないかなぁ」と、
大人の方がお願いする形で誘う方が良いかも知れません。

▼眠る前の習慣を工夫するようにご家族に促します。
布団に入る前に、お子さんが好む儀式「本を読み聞かせる」「お祈りをする」「添い寝をする」などを、
毎日続けるようにして、習慣にするように勧めます。
これまでの生活が変わってしまったので、先の見通しが持てなくなっているのです。
眠る前にいつも行うことがあることで、
お子さんは、「これからお布団に入るんだ」という見通し、気持ちの準備ができるようになります。

▼抱っこしましょう。(眠る前にむずかったときも、夜中に目を覚ました時も・・・)
「そばにいるよー」「どこにも行かないよー」「平気だよー」「守ってあげるからね」などと、安心させる言葉をゆったりとした口調で語りかけてください。
ゆったりと、語尾を少し延ばすような感じでの語りが良いように思います。
もう大丈夫、安全だと感じられれば、眠りにつくことができますので、このように保護者にお伝えください。

★2:おびえたとき

【状態】
何か悪いことが起きるのではないかとびくびくしている。親の後を追いまわす。離れたがらない。

【関わり】

▼一緒にいること、大丈夫だと言うことが一番大事です。
保護者が一緒にいられるときには、一緒にいるように勧めましょう。

▼「今はもう大丈夫」とお子さんと自分に言い聞かせてください。

▼トイレなどのときに親御さんが少し席を外すときも、親御さんに代わって
「こわいのね」
「行ってほしくないんだね。今は大丈夫。必ず戻って来るからね」
「ママは、○○ちゃんのことが大好きだよ」
「ママはずっーと一緒だからね」と声をかけるように勧めてください。
また、周囲の支援者にもこのような声をかけるように促したいですね。

▼親御さんがその場を離れるときは、
支援者が、いつ、どこに行き、何時にもどるのかを家族に聞き、それをお子さんに伝えるようにします。
そして、支援者など誰かが、お子さんの近くにいつもいるようにしましょう。

▼支援者や親御さんが、
消防、警察の人やボランティアのおじさん、おばさん、お兄さん、お姉さんなどが、
お子さんや親御さんのために、どんなにがんばっているかを優しく話しかけてみましょう。
「だから・・・大丈夫」と結んでください。
話しかけているうちに、語っている大人の側が安心してきます。

▼一緒に、明日の準備をするなど、何か明日につながる希望が持てることをしましょう。

★3:食の問題

【状態】
食べ過ぎる、食べない

【関わり】

リラックスが大事。あせらないで、くつろぐことです

▼リラックスするように勧めしましょう。
親子共にリラックスさせるが大事です。軽い体操や、親子でマッサージをするように勧めるのも一つの方法です。
支援者が親御さんをマッサージし、親御さんがお子さんをマッサージするというようなことをしても良いでしょう。
こちらの情報提供のページの中の「支援者の方向け」には「避難所でできる遊び」がありますが、
支援者が一緒に遊ぶこともリラックスをさせる大事な関わりです。

▼食事の時間は楽しく、くつろいだものにしましょう。
支援者たちも、一緒の場合は、楽しい会話を心がけます。

▼近くに、身体に良いおやつなどを置いておきましょう。
幼いお子さんは動きながら食べるものです。

▼明らかに体重が減っているときは、診察を受けるように促す必要があります。

★4:赤ちゃん返り

【状態】 
以前にできていたことができなくなる。

【関わり】
「できる、できない」を問題にしない

▼大人が無理強いをしてはいけません。かえって逆効果になります。
ただ、親御さんは、不安と余裕がない場合ほど、
わざと、大人を困らせるためにそうしているかのように思えて、腹を立ててしまうことも少なくありません。
「こんなに大変なのに、これ以上大変にしないで!」と言いたくなるかも知れません。

支援者は、その気持ちを酌みましょう。
「親御さんとしては、そう言いたいですよねー。
ただ、かえって、できなくなちゃうかも知れませんよ」と温かく諫めてください。

▼おまるが使えない、一人で行けていた場所に行けなくなったり、着替えを手伝ってほしいなどなど、
そのときに、「できる・できない」を問題にしないことが大原則です。

それよりも、必要なことは、
理解されていること:「前はできていたのに、したくなくなっちゃったんだね」。
受け入れられていること:「そういうときもあるよねー」
愛されていること:「お母さんは、○○ちゃんを大好きだから、一人でしてもらいたいんだと思うよ」「大好きだから、そう言うんだろうね」
手伝ってもらえることを示す:「お母さんに手伝ってもらえるようにお願いして見ようか?」
「私が手伝っても良いか、お母さんに尋ねてもいいかな?」

▼できなくなったことは、安心感が増すにつれて、回復するものです。
「一度覚えたことは、よっぽど年をとらないと、できなくなるなんてことないですよねー」
「それができない大人なんていないですよねぇ」とのんびりとした口調で、親子に関わってください。

★5:危険なことをする

【状態】
かえって危ないことをする

【関わり】
危険な行為は止めるのは当然ですがーどう止めさせるかが問題です。

▼子どもの安全を守ってください。
落ち着いて子どもに近づき、必要なら抱きとめてください。
後ろから抱えます。身体全体で包むように抱えます。

▼その行為が危険であること、そのお子さんが大切な存在であること、
大人がお子さんの安全を願っていることを、伝えましょう。
「元気なのは本当に嬉しいよ。でも、○○ちゃんはとても大切な人なんだよ。
危ないことをしたら、悲しいよ。私を安心させてくれないかな」

▼別のもっといい方法で、支援者や保護者の関心がお子さんに向くように、
お子さんに何か一緒に作業をして、たくさん褒めていきましょう。


▼災害のときの大変だったことを、繰り返し語る子もいます。
もし、その話に耐えられるなら、そのお子さんの語る世界を否定せず、その「語り」に耳を傾けましょう。
全てを傾聴しなくても良いのですが、「そうなの」「そうだったの」と、頷いて聞くようにします。


▼子どもが暴力的な遊びをしているときは、子どもの感情に注目し、お子さんの感情やご自分の感情を正直に表現し、言葉で表現ができるように手助けしたいと思います。
「恐いね」「嫌だよね」「腹が立つね」「心配だよね」などです。
その上で、そばにいて抱っこしてたり、なだめたりして、お子さんもを支えてたいですね。

▼激しく動揺する、上の空になる
同じ怖い場面を繰り返すなどの場合は、子どもを落ち着かせ、安全であることを伝えます。
この場合は、専門家への相談を考えてください。


posted by マスター at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 震災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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